家を売却するとき、残すべき家財は多くありません。しかし本当に差が出るのは「何を残すか」ではなく、「どう残すか」です。リモコンは電池を抜いて説明書とまとめておく、鍵は用途ごとに整理して揃える、保証書はクリアファイルにまとめる――こうした小さな配慮は、内見時の印象を大きく変えます。丁寧に扱われてきた家ほど購入希望者の安心感が高まり、売却を有利に進めることにもつながります。空き家管理士の視点から、残し方・見せ方の実践ポイントをお伝えします。
売却前に残す物は最小限。でも「整え方」で印象が変わる
売却前の片付けでは、基本的に家財は残さず、空の状態で引き渡すのが一般的です。
ただし、設備に関する物(説明書・保証書・鍵類など)は残した方が売却がスムーズです。
そして重要なのは、“ただ置いておく”のではなく“整えて残す”こと。
人は内見時に「この家は丁寧に使われてきたか」を無意識に判断します。
雑に置かれた説明書と、用途別にまとめられた説明書では、
同じ家でもまったく違う印象になります。
次の買い手さんへのメッセージを形にするという視点
売却前に残す物は、単なる「設備の付属品」ではなく、
**“この家をどんなふうに使ってきたか、次の方へのバトンとして伝えるもの”**でもあります。
たとえばリモコンや説明書をまとめて残しておくことは、
「この設備は安心して使えますよ」という小さなメッセージになりますし、
給湯器や電灯のスイッチの位置を書いたメモを添えておくだけで、
買い手の方が新生活の初日に迷わず使えるという安心につながります。
家というのは、そこに暮らした人の気遣いが残るほど
「この家は大切に使われてきた」と感じてもらえます。
ほんの一言添えたメモや、丁寧に揃えられた付属品の置き方が、
次に住む方への“静かなメッセージ”となり、内見の印象を大きく変えることがあります。
新しい住まい手に向けて、
「どうぞ気持ちよく、この家での生活を始めてください」
──そんな想いが伝わるよう、残す物ひとつの整え方が大切なのです。
リモコン類は電池を抜いて説明書とまとめると、丁寧さが伝わる
エアコン・給湯器・照明などのリモコンは、
電池を抜き、故障を防いだ状態で説明書と一緒にまとめておくのが理想です。
これは単なる機能説明ではなく、
「次の方も安心して使えるように」という気持ちが伝わる作業です。
・リモコン3つまとめてクリアポケットに入れる
・「電池は抜いてあります」とメモを添える
こういった小さな心遣いは、内見時の印象を確実に良くします。
鍵類は“種類ごとに”整理し、用途を書いておくと信頼につながる
鍵は最も紛失しやすい物でもあり、
丁寧に整理されていると売主の誠実さが強く伝わります。
例:
- 玄関(メインキー×2)
- 勝手口
- 物置
- 郵便受け
- 室内のスペアキー
用途を書いたタグをつけるだけで、
買主は「この家はきちんと管理されていた」と安心します。
設備の説明書・保証書は“1冊のファイル化”で価値が上がる
保証書・取扱説明書・交換履歴などは、
クリアファイル1冊にまとめておくだけで
家の価値そのものを丁寧に引き継ぐ“付加価値” になります。
とくに喜ばれる資料は以下です。
- 給湯器・エアコンの交換履歴
- 修繕履歴(雨どい・屋根・水回り)
- 境界杭の確認資料
- 隣地トラブルがなかった旨の簡単なメモ
実務的ですが、買主の不安を大きく減らす項目です。
壁の日焼けは消せなくても、埃と汚れを取れば“印象は改善できる”
壁紙の日焼け跡は素材の変色なので完全には戻りません。
しかし、埃・ヤニ・手垢を取るだけで印象は見違えるほど改善します。
特に以下は内見で必ず見られます。
- スイッチ周り
- 巾木の上
- カーテンレール周り
- エアコン下の壁
“新しくする”より“清潔に保つ”ことが大切です。
売り出し期間中の家は“生活感を消す管理”がポイント
空き家の売却が長期化すると、湿気や臭いが出てきます。
そこで必要なのは、生活感を消しながら維持管理すること。
- 月1回の通気・通水
- 簡易清掃
- 郵便物の整理
- 外観の軽い手入れ(落ち葉・雑草)
この4つだけでも「丁寧に扱われていた家」という印象になります。
十分に使える設備類は“提案として残す”こともできます
売却前の片付けでは原則として家財を残さないのが基本ですが、
状態が良く、次の買い手にとって実用性のある備品については、
「提案として残す」という方法があります。
たとえば、
- 十分に使えるエアコン
- 照明器具(LEDなど劣化の少ないタイプ)
- しっかりした造りの物置
- 室内収納の補助棚や突っ張り棒など、利便性が高い備品(特に特注で作り取り付けた物)
これらは、買い手が希望すれば“そのまま使えるメリット”があります。
ただし、必ず買い手の了承を得てから残すことが前提です。
不要と判断された場合に備え、撤去の段取りを早めに決めておくと安心です。
また、カーテンについては少し扱いが異なります。
引き渡し前に外してしまうと、日焼けによる色ムラが一気に目立つことがあるため、
内見時の印象を守る目的で「残したまま」にしておくケースも多く見られます。
買い手が不要と判断した場合は、引き渡し前に撤去すれば問題ありません。
このように、
“提案として残す/不要なら撤去する”という柔軟な姿勢は、
売却活動そのものをスムーズに進めるうえで非常に効果があります。
この記事の執筆者|空き家管理士 大野大助
相続物件・空き家の片付け・売却サポートに20年以上携わる。
年間200件以上の住宅の片付け・管理に関わり、
実家の整理や遠方からの売却相談など幅広いケースに対応している。
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