初めての家・空き家の売却(Ⅱ)上手に売却するにはどうすれば良いのか

実家片付け
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筆者ご紹介

溝畑憲人(みぞはたけんと)
【資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

例えば、あなたが100円で売れるリンゴを持っていたとします。そこにリンゴを買わせてほしいという人がやってきました。その価格は、なんと20円でした。当然あなたは、リンゴを売らないでしょう。それは何故でしょうか?答えは簡単です。100円で売れると知っているからです。リンゴの例を挙げましたが、不動産も同様なのです。不動産は高額なものですので、このように価格を把握していれば大きな損をするリスクを回避できます。

しかし不動産はリンゴと違い、価格を調べることが容易ではないという点があります。そこで簡単に不動産の価格を把握できる方法をご紹介させて頂きます。

1.所有不動産の価値を調べてみよう

 不動産は土地と建物の一体として成り立っておりますが、「土地」の価格と「建物」の価格は異なり、価格を調べる方法も異なります。まずは「土地」の価格を調べる方法について紹介します。

 まず土地については「相続税路線価」を利用して価格を算出することが可能です。相続税路線価とは、国が日本中の道路一本一本に値段(路線価)を振り、その道路に接している土地の面積(1㎡)×路線価をすれば、誰でも簡単に土地の時価を算出できるという方法です。この方法で計算された土地の価格のことを「相続税評価額」といいます。

(例)土地面積(100㎡)×路線価(120、000円)=12,000,000円(相続税評価額)

実は、この相続税評価額は実際の売買価格より低くなるように設定されています。実際に売買される価格を10とすると、相続税評価額は8割程度です。先程の例を用いて売買価格を計算すると、12,000,000円÷0.8=15,000,000円(売買価格)となります。もちろん土地の形状や周辺環境によって価格は左右されますが、これで基準となる価格を把握することができます。なお路線価については、国税庁のホームページより確認が可能となっております。【https://www.rosenka.nta.go.jp/】※路線価がない地域については倍率法を利用します。

 次に建物価格を簡単に調べる方法をご紹介します。建物については市町村から届く「固定資産税 納税通知書」の中の「課税標準額」を確認します。

 例えば、建物の課税標準額の欄に500万円と記載されている場合は、500万円が建物の固定資産評価となります。この課税標準額は、実際に売買される価格を10とすると、6.7割程度に設定されています。したがって、建物価格を補正すると以下のようになります。

(例)500万÷0.7=714万(売買価格)

 こちらも、建物内の設備や管理状況により価格が左右されますが、おおよその価格を把握することができるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

2. 不動産を買取業者に売るのは得策なのか

 不動産を売却する方法は大きく分けて「仲介」「買取」の二つがあります。

この内、仲介は不動産会社に売却依頼をして売却活動を行う一般的な方法です。一方買取は一般客に売却するのではなく、不動産会社に直接買い取ってもらう方法をいいます。

 まず買取業者に売却するメリットとして以下が挙げられます。

・仲介手数料が無料になる ・すぐに現金化できる ・インターネット募集を行わないため近所に知られない ・売却時期が明確なため計画が立てやすい等々

不動産会社が直接買取する場合、価格の相場は通常価格の7割~8割程度といわれています。もちろん状況によっては、通常価格の7割~8割で現金化できるなら満足という人もいます。

 しかし一部の会社では、5割程度の買取価格で提案したり、色々な理由をつけて査定額を減額する会社が多いのも事実です。そのため自身の不動産価格をしっかり把握しておくことが、売却成功のカギとなるのです。

【ご質問】実家の家が古く建物で使えないので建売業者さんが買い取る話がきました。担当者の方によると。解体費用を値引きしてほしいといってきました。当初の売り出し価格を値下げしたばかりで、さらに解体費用も下げないといけないのでしょうか

溝畑憲人 氏の回答
→ 不動産を買取業者に売却する場合、必ず相見積もりをしましょう。一社のみで見積りをしている場合、今回のケースように解体費用の値引き等、色々な手法で価格を減額されるケースが非常に多くみられます。手間は少々かかりますが、できる限り相見積もりを行い、少しでも良い条件で買い取ってもらえる業者を探しましょう。また、売却をお急ぎでなければ、売出価格を少しずつ減額して、販売活動を継続することも検討するようにしましょう。

3.不動産会社の本音/上手な頼み方

 先ほど、不動産の売却方法には「仲介」「買取」の二つがあると説明しました。

不動産会社の立場では、どちらの取引をするほうがメリットになるかを見てみましょう。

 まず、仲介ですがこちらは宅建業法という法律により報酬額が定められております。一般的によく目にするのが「売買価格×3%+6万円」です。そこで1,000万円の物件を例に実際の報酬を計算してみます。

(例)1,000万円×3%+6万=36万 これが不動産会社の報酬となります。

さらに、買手と売手から仲介手数料を取得する両手仲介を行った場合、1,000万円の物件であれば最大62万の報酬を取得できることになります。

 一方、買取の場合はどうでしょうか。同じように、1,000万の物件を例に見てみましょう。

例えば、1,000万円の物件を800万で買い取ったとします。この場合、そのまま転売しただけでも200万の利益となります。さらに100万円程のリフォームを実施し1,300万円程で売却する場合もあります。これを見てわかる通り、リスクは伴うものの「仲介」と「買取」では、これだけの利益差が発生します。

 実際に、大手不動産会社でも「買取保証付き」という制度があります。買取保証付きとは一定期間、通常の売却活動を実施し、その期間に売却ができなければ不動産会社が買取るという制度です。この制度を利用する際に一番注意しなければならないのが、最初から買取を目的としている不動産会社が存在しているということです。しっかりとした売却活動を行わずに期間が経過するのを待っている不動産会社を筆者はよく見てきました。このような仕組みを知っていれば、リスクを回避できる可能性も上がりますので、是非覚えておいて下さい。

4.不動産会社選びのポイント

 不動産を売却する際、どのような会社に依頼すれば良いのか、おすすめの選び方を二つご紹介させて頂きます。

 まず一つめは、大手ポータルサイトを何社利用しているかです。不動産会社によって、SUMMOのみで掲載を行っている場合や、SUMMO、athome、ホームズ等多くのポータルサイトで物件の掲載を行っている等、不動産会社によって利用している物件掲載サイトが異なります。もちろん物件をより多くの人に見てもらえるほうが、売却のスピードも上がるため、できるだけ多くの掲載サイトを利用している不動産会社を選ぶようにしましょう。

 二つめは、不動産会社が実際に掲載している物件を確認することです。ここで確認して頂きたいことは、物件写真が丁寧に撮影されているか、物件のアピールポイントや周辺施設まできちんと登録されているかです。細かいことをきちんとしている会社には、誠実な営業マンも多いです。また、現在の不動産流通はインターネット検索が主流であるため、物件の情報をしっかりと掲載している会社を選んだほうが、売却できる可能性が一段と高くなります。

5.不動産会社を動かす交渉術

 売却をする際に不動産会社と締結する媒介契約には、以下のような種類があります。

【媒介契約の種類】

 専属専任契約専任契約一般契約
契約できる不動会社数1社のみ1社のみ複数社可能
自分で見つけた 買主との直接交渉不可可能可能
レインズへの登録必須必須任意
販売状況の報告1週間に1回以上2週間に1回以上なし
契約期間3か月3か月なし

 

 不動産会社は、売主と媒介契約を締結する場合、必ず「専任契約・専属専任契約」を狙います。何故なら契約できる会社が1社に決まっているため、優先的に物件の販売活動を行うことが可能であり、仲介手数料を取得できる可能性が格段と上がるからです。また、専任媒介契約以上であると不動産会社の売却活動も活発になることが期待できるため、信頼できる不動産会社であれば、専任媒介契約を結ぶことをおすすめします。

 専任以上の媒介契約の場合、期間が3か月と定められています。そこで、この一言は必ず言っておきましょう。それは「3か月で売れない場合は他社も検討しようと思う」です。その気がなくてもこの一言は伝えておきましょう。これにより不動産会社は、何とか3か月に以内に売却するため、さらにしっかりとした営業活動を行ってくれるようになります。

より詳しい内容は

(Ⅰ) 初めて方へ不動産の売り方を「現役プロ」が教えます
不動産売却の流れ

現在こちらのページを開いています
(Ⅱ)不動産を上手に売却するにはどうすれば良いのか
1.所有不動産の価値を調べてみよう
2.不動産を買取業者に売るのは得策なのか
3.不動産会社の本音/上手な頼み方
4.不動産会社選びのポイント
5.不動産会社を動かす交渉術

(Ⅲ)売却の準備をしておこう
1.不動産を売却するために準備しておくこと
2. 物件を内覧する人の気持ちになって家を見てみよう
3. 賃貸の需要があれば、買手の層が増える

(Ⅳ)知らないと損する税金のこと
1.マイホームを売った時の特例
2.被相続人の居住用(空き家)財産を売ったときの特例
3. 小規模宅地等の特例で相続がこんなに安くなる
4.放置は厳禁!必ず不動産の今後について対策しておこう

(Ⅴ)空き家バンクについて
1. 空き家バンクとは
2. 空き家バンクを利用するメリット
3.空き家バンクの登録方法
4.空き家バンクのみに頼るのは正確なのか